寄稿「原発建替え!?」


「原発建替え!?」

 

理事・公害環境対策部員 杉目 博厚

杉目博厚先生顔写真 2014年12月18日の毎日新聞の報道で、経産省は17日原子力政策の方向性を議論している有識者会議で年末にまとめる中間整理の中に、原発の建替え(リプレース)を検討事項として盛り込む方向で、調整に入った。という記事が掲載された。安倍政権が掲げる「原発依存度を可能な限り低減する」方針を達成するには、「廃炉に見合う供給能力の取り扱いを含めた原子力の将来像が明らかにされなければ、電力会社や立地自治体が廃炉を判断しにくい」と建替え了承の必要性を指摘。今後の原子力政策で「留意する必要性がある」とした。

 この文言を理解できますか?原発依存度を限りなく低減すると言いつつ、建替え了承……霞が関文学は一般常識から乖離している典型である。

 建替えは、老朽化原発の廃炉と同時に新たな原発を建設する手法で、これでは全く依存度を軽減できるわけはない。新たな原発は作らないという政府の方針はどこに行ったのか。
 彼らの言い分は「新たな原発ではなく、建替えだ!」ということなのだろう。
 しかし、一般常識で考えれば新たな原発は作らないということは、新たな原子炉を作らないということに決まっているではないか。しかし、優秀な官僚諸君は、この言葉の重箱の隅の隅をくまなく探し、例えば女川原発という既存の原発の建替えだから、新しい原発には当たらないという見事な論理形成を生み出したのであろう。

 新たな原発は作らないという方針に対し、我々国民は、運転から40年たった原発の延長を認めなければ、2030年には原発の発電能力は半減し、49年にはゼロになる。(もちろん再稼働は認めないということが我々の主張ではあるが)という、消極的ではあるが、そのような原発自然消滅に期待を抱いていた節もあるだろう。
 しかし、そうは問屋が卸さないのである。

 このような背景には、廃炉になると立地自治体に支払われる「電源3法交付金」が打ち切りとなるため、立地自治体から廃炉後の経済支援や原発建替えを求める声が上がっていたという事実がある。
 このことこそが、今後「原発ゼロ」を勝ち取るために解決しなければならない一番重要な肝なのだ。
 原発に依存しない社会を作り出すためには、「電源三法交付金」に頼らない地域・社会づくりを、立地自治体のみだけではなく国民全体として創造していかなければいけない。
 それができれば、「命と引き換えの経済効果」である原発立地を希望する自治体など出てくるはずがない。そうすることにより、立地自治体の同意が得られないところに原発は作ることができずに「原発ゼロ」を成し遂げることができるのである。

 いずれにしても、原発建替えなど「総選挙の争点」に全くなっておらず、そのような考え方すら発していなかった与党が、選挙圧勝の結果を得てこのようなことを矢継ぎ早に提出してくる。

 霞が関文学に振り回され、次世代に大きな禍根を残す選択など許されるはずもなく、今後我々は、政府の非を問いただし、この方向性を阻止していかなければいけない。

 くどいようではあるが、それと合わせて、立地自治体の経済が「原発に頼らなくても成り立つ道」を国民全体で考えなければいけないということを主張してペンを置くと致します。

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