印象記
第3回保団連原発問題学習交流会
記念講演「日本で再生可能エネルギー社会をどう実現するか」
講師は日本環境学会前会長 和田武氏
全国保険医団体連合会(保団連)は4月6日、東京都内で第3回原発問題学習交流会を開催、23協会から61人が参加しました。当協会から参加した公害環境対策部の島和雄理事、杉目博厚理事より印象記が寄せられました。
もう一度勉強したいと感ずる講演だった
理事・公害環境対策部長 島和雄
主立った先進国は脱原発・再生可能エネルギーを重視する政策へ転化しようとしている。しかし日本のエネルギー政策は再生可能(自然)エネルギーを減らして原発依存に傾いている。このような内容で始まった記念講演について、若干ではあるが報告する。
講演は、はじめにドイツ・デンマークで進む市民・地域主導による再生可能エネルギーの普及について紹介。さらに日本における様々な地域での活動を紹介し、日本での再生可能エネルギー社会実現の可能性と課題について述べた。エネルギー消費の続く地球で持続可能な人間社会を形成するにはどうするか、その解決策への提案とも言える話であり、いわば「原発不要論」とでも言える講演だった。
和田氏は、再生不能(原子力・化石資源)エネルギーと再生可能エネルギーの特性について以下のように述べる。
再生不能エネルギーは、「枯渇性で有限」、使用後の廃棄処分策も無く、資源コストも「高価で、今後は上昇」する。生産手段は「大規模集中型」であり、その主体は「大企業・電力会社」に委ねるしかない。さらに「資本集約的」産業であり、雇用を促進するものではない。
これに対し、再生可能エネルギーは、「その特性から市民等の地域主体にした普及に適したエネルギー」であり、何処にでも「地域資源」(=「国産」)として存在し、「非枯渇性でほぼ無限」。市民を含む広範な主体によって生産可能(小規模分散型)であり、「労働集約的で多数の雇用が生まれ」、何よりも事故リスクや汚染に対しては「ほとんど無いか、小さい」産業と述べる。
自然エネルギー資源が量・質ともに豊富な日本では、多くのリスクや不透明性を抱えながら原発に依存しなくても、将来は全エネルギーを賄うことは可能であり、豊かな社会を持続可能にする唯一の方法であると提案している。
公害環境対策部としても、もう一度皆様とともに勉強したいと感ずる講演会だった。今後の道筋を照らす非常に有意義なものだった
理事・公害環境対策部員 杉目博厚
第3回保団連原発問題学習交流会に参加するため、4月6日、桜が散り始めた東京へと向かった。 交流会では、基調講演・記念講演・特別報告・各協会からの報告と充実した内容で予定時間を超過するほどであったが、その中でも日本環境学会前会長であられた和田武氏の記念講演はまさに我が意を得たりという内容のものであった。
「脱原発」を訴え、運動をすすめる中でどうしても立地自治体の経済や雇用というものが大きな壁としてあることは事実であり、「背に腹はかえられぬ」という自治体側の主張を「倫理感や科学的根拠に基づく論理」などだけで説得することは困難であると感じていた私にとって、今後の道筋を照らす非常に有意義なものであった。
デンマークやドイツで飛躍的に発展している市民・地域主導による脱原発・再生可能エネルギーの紹介を中心としながら、日本という国土がいかに再生可能エネルギーに適した国なのかということをご講演頂いた。非常に具体的且つ現実的な発想とそれを証明する事例の数々は今後の日本が目指すべき方向性を示しており、またそれが地域・市民の生活に直結した解決策となる内容であった。講演の内容のまとめとして示されたものをご紹介する。
「日本の再生可能性エネルギーの将来性と条件整備」
1.再生可能エネルギー資源は質量ともに豊富、将来的に全エネルギーを賄うことは可能である
2.有効な再生可能エネルギー普及政策と市民や地域主体の取り組みにより、飛躍的普及が期待できる
3.再生可能エネルギー産業を発展させるのに適した技術力があり、経済発展や雇用創出効果も期待できる4.市民や地域主体の取り組みにより地域の活性化が進み、農林業などの一次産業も発展する
5.環境保全、エネルギー自給率向上、国際貢献等の社会的普及効果も期待できる
6.今後、発送電の分離、電力自由化、送電網の整備等の条件整備が必要である
7.再生可能エネルギーの熱利用、燃料利用の積極的な推進政策を導入することも重要。
終わりに、講演の最後に和田氏が言われた言葉をご紹介する。
Think globally , act locally !
Think of the future , act now !