シリーズ「女川原発廃炉への道」No,43


シリーズ「女川原発廃炉への道」

やさしい言葉で脱原発

理事長 井上 博之

 元福井地裁裁判長の樋口英明氏に注目しています。原発の運転差し止めを求め、退職後も精力的に執筆されたり講演されたりしています。なぜ原発を止めたのか、裁判官らしくなく(?)、誰にでも分かる言葉で語っておられます。
 作家井上ひさしの「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく…」という言葉を想い出しました。
 原発を止めるべきとした論理はこうです。「原発事故は極めて甚大な被害をもたらす。だから、原発には事故発生確率が極めて低いことが求められる。地震国日本の原発の安全性には高度の耐震性が不可欠である。しかし、今ある原発の耐震性は極めて低い。よって、原発の運転は許されない」というわけです。
 以上の論拠として、樋口氏が示されたのは、現実に日本各地で観測されている地震の強さをガルで表示し、各原発の耐震設計(基準地震動)のガル表示と比べてみることでした。原発の耐震性を上回る地震の発生は、ざらにみられることに誰でも気がつきます。脱原発を進めるうえで、たとえ難しい言葉で科学論争に持ち込まれても、自分でもしっかり納得できる論理で揺るがないようにしておくことが大切です。
 世論調査によると、原発容認の人が増えているといいます。別に原発の安全性が高まったわけではありません。東京電力福島第一原発事故の大変さ、悲惨さを多くの人が胸に刻んだはずなのに、それが薄らいできたのかもしれません。世界の人々を震撼させたこの事故のことを忘れないように、常に発信し続ける必要性を感じます。原発の危険性を現実のものとして経験してしまった、私たちの責任は重いのです。
 分かりやすい言葉で、後世の人々に事故の教訓を語り継ぐ責任を、私たちは負っているのではないでしょうか。

 

本稿は宮城保険医新聞2023年5月25日(1814)号に掲載しました。

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