(2023年3月)
東日本大震災から12年
理事長 井上 博之
トルコ・シリア大地震。想像を絶する甚大な被災の報道に接し、大震災経験者としての想像が働き、とても居たたまれない気持ちになります。
東日本にまたがる大地震と大津波による広範囲な災害と、それらに起因する壊滅的な原発事故の被害から12年が経ちました。しかし、復旧や復興は一律には進んでいません。各地域における個々の事情の違いが、大きな復興格差を生み出しています。特に大きな違いが見られるのは、原発事故の影響を強く受けてきた人々です。
震災からの復旧・復興は、目に見える形ではかなり進んできたと思います。しかし、まだまだ困難な問題が残されています。被災者の生活再建をめぐっては、災害公営住宅の家賃上昇の苦しみ、半壊状態の自宅に住み続けている在宅被災者の問題など、解決が求められる問題が多く残されています。より重要な問題とも言えましょうが、東京電力福島第一原発事故によりたまり続けている放射能汚染水を、処理したとはいえ海洋放出しようとしています。安全性にも疑問が呈されています。国民の理解も国際社会の理解も得られない中で、しゃにむに進めようとしています。さらに、お隣の福島県には、事故を起こした原発の廃炉の見通しも立たず、故郷に帰れない原発被害者が沢山おられます。胸が痛みます。
12年経っても復旧・復興の課題は山積しています。まだまだこれからです。そんな時に、とんでもない話が持ち上がっています。政府は国民的合意のないまま、軍事費(防衛費)を増やすために、復興予算(復興特別所得税)の一部を転用しようとしています。被災地の私たちはこんな暴挙を許すわけにはいきません。
災害の被災者が一日も早く元の生活を取り戻せるように、力を合わせて問題解決に臨めるようにしたいものです。この12年の間にも、国内・国外にさまざまな災害を経験しました。私たちは、私たちの場で、震災からの復旧・復興を成し遂げていくことが、全国の、全世界の被災者と連帯する道であろうと確信します。これからも頑張ります。