シリーズ「女川原発廃炉への道」
電力不足キャンペーンの裏側、再稼働必要論のウソ(後編)
理事 八巻 孝之
◇◆◇ 原発はテロの標的
前回の原発再稼働必要論のウソ(前編)に続くウソを指摘する。
ウクライナの原発がロシアの攻撃を受けて占拠され、再び放射能汚染が懸念される事態が起きた。大型航空機の衝突やテロで原発が被害を受けた場合、離れた施設から原発を冷却し続けることになっているらしいが、一部の原発は設置期限を過ぎても未完成のままだ。
東電管轄の新潟県柏崎刈羽原発では社員が同僚のIDカードを使って中央制御室に不正侵入する極めてずさんな管理実態が明るみに出た。
そもそもテロは想定していない。原発が占拠されれば敵に核兵器を渡すのと同じだ。ここにも嘘が見える。
◇◆◇ 国民を欺く情報操作
静岡県浜岡原発の停止決定を機に電力不足キャンペーンが始まった。しかし、福島県の広野火力発電が全面復旧すれば真夏のピーク時に電力は不足しない。
「電力が足りない、原発を稼働させねばならない」ならば、この10年間なぜそのようにならなかったのか。そもそも電力は原発がなくても足りているからである。
国民を欺く情報操作の裏には、なおも原発に固執する政府や電力会社の姿勢が垣間見える。電力供給の上積みを隠して危機をあおる嘘が見える。
◇◆◇ 核肯定論は偽善
地球がかつて核で滅んだという神話がある。『ヨハネの黙示録」12:7~12:8には「天では戦いが起った。もはや天には彼らのおる所がなくなった」とある。
第二次大戦時には核を開発してしまった。原発必要論を唱える人々は、「原子力事故は二度と起こさないという強い決意のもと、国の新規制基準に適合することはもとより、規制の枠を超えて自主的に徹底した安全対策を講じていく」という。「寄らば大樹の陰」と言わんばかりの核肯定論者は、延々と苦難の転生をするにちがいない。
東日本大震災から11年、福島第一原子力発電所の廃炉は想定通り進まず、政府と電力会社への不信感は強まるばかり、天の目から見れば原子力は危険極まりない。
本稿は宮城保険医新聞2022年12月15日(1801)号に掲載しました。