シリーズ「女川原発廃炉への道」No,36


シリーズ「女川原発廃炉への道」

電力不足キャンペーンの裏側、再稼働必要論のウソ(前編)

理事 八巻 孝之

◇◆◇ 同じ過ちを許してはいけない
 令和4年7月14日、岸田首相は「この冬、最大で原発9基の再稼働を進める」と語った。
 いまだ廃炉作業の続く東京電力福島第一原発。東日本大震災から11年経ち、世の中では原発不要論が広がったが、政府は原発維持を貫いている。原発の最大活用を強調し、将来的には新増設まで見込んでいる。奇しくも前日の13 日には、東京地裁が東電の旧経営陣4人に対して合計13兆円超の損害賠償を命じる判決を下したばかりだ。経営者らの怠慢が福島の過酷事故を招いたが、再稼働を急ぐあまり対策がいい加減になり、また同じ過ちを繰り返すことにならないのか。
◇◆◇ 平均値超えは想定外
 原発がどれくらいの地震に耐えられるかを示す「基準地震動」の設定が非常に甘い。福井県の大飯原発3・4号機の場合、関西電力が算出している地震動は856ガル。しかし、揺れの「ばらつき(平均値を超える値)」を考慮すると、1150ガルに跳ね上がる可能性がある。
 懸念されるのが活断層の存在だ。すべての原発に言えることだが、平均値を超える揺れは「想定外」という嘘が見える。
◇◆◇ 稼働40年以上の原発老朽化
 さらなる懸念が老朽化だ。福島原発事故を教訓に稼働年数は「原則40年」というルールが設けられた。しかし、新規制基準に合格すれば一度だけ20年延長できるという「例外」という嘘が見える。実際、2004年に美浜原発3号機では、老朽化による配管の腐食を放置したことで蒸気噴出事故が起き、作業員11人が死傷する惨事が起きている。
◇◆◇ 火山大国日本のリスク
 桜島の約50㎞先には川内原発がある。また、愛媛県の伊方原発や福岡県の玄海原発から約160㎞の距離には阿蘇山カルデラがある。破局的噴火が起こればこれらの原発への影響も計り知れない。火砕流が発生すれば原発対応どころではなくなり、「安全神話」の嘘が見える。
 次回、再稼働必要論のウソ(後編)に続く。

 

本稿は宮城保険医新聞2022年11月25日(1799)号に掲載しました。

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