シリーズ「女川原発廃炉への道」No,29


シリーズ「女川原発廃炉への道」

原発廃炉への道

内科・仙台市 水戸部 秀利

 去る1月13日、東北文化学園大学総合政策学部の学生20名に、「放射線被ばくと健康問題」と題して講義をする機会があった。馬内里見准教授が企画した特別企画「震災後の地域づくりとエネルギー問題」の15枠の1枠である。東北電力広報部も「原子力・再生可能エネルギーの現状」と題して1枠を担当しているので主張の公平性は担保されている。
 対象は半世紀以上若い世代であり、戦争はもちろん原爆もビキニ水爆実験もチェルノブイリ事故も彼らの生まれる前であり、大震災と原発事故も、彼らはまだ小学生のときであった。中学や高校のカリキュラムの放射線にかかわる内容は不十分で、今回のトリチウム水教材のように、政府から一方的に教材が配られる。
 私の話は、「1.長町病院の被爆者外来の経験と被爆者の健康」、「2.放射線被ばくの基礎知識」、「3.被ばくについての国の考えと私の考え」の3部構成とし、できるだけ客観的事実やデータに基づいて説明し、彼らに考え選択してもらえるように工夫した。最後に、有名な双葉町の看板をスライドに彼らの望む未来を二択で問いかけた。(下図)
 約1時間半の講義であったが、教室の後ろでじっと聞いている若者が、どのように受け止めたかは、その表情からはわからなかった。約10日後に、馬内准教授から学生の感想文が送られてきた。1名だけ「しばらくは原発との共存はやむを得ない」という受け止めだったが、他はすべて後者の選択であった。
 放射能汚染、気候危機、格差と貧困、戦争…と行き詰まった社会を作ってしまったのは私たちである。自らの反省に立ち、彼らと共に未来を議論しながらバトンを渡していくのは私たちの責務である。それが確実な廃炉へとつながると思う。

 

本稿は宮城保険医新聞2022年4月25日(1780)号に掲載しました。

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