シリーズ「女川原発廃炉への道」
われわれは原子力発電を必要としていない
宮城県社会保障推進協議会顧問、医師 刈田 啓史郎
現在、原子力発電はそれを必要とする理由を全く失っている。いったん事故が生じた場合の悲惨さを、福島第一原発事故で国民は嫌というほど知らされた。高い代償を払わされる原子力発電事業は倫理的に許されるべきではないと。仮に原子力発電がなければ国民の生活に支障がでるのであれば、安全性に目をつぶって我慢しようという考えも出てくるかもしれない。しかし、すでに全原子力発電所が稼働していない状態でも、電力不足の混乱は生じないことを国民は体験している。しかも、他の発電方式と比べて原子力発電は発電コストが高く、経済性からもその存在価値がない。さらに、次の世代に処分のできない大量の放射性核廃棄物を残し、多大のリスクを与えてしまう。それまでして、原子力発電をすすめてよいのかどうか、答えは否である。
存在価値を失っている原子力発電を、残しておこうとする現在の国のエネルギー政策は、国の安全を自前の核抑止力によろうとする非常に危険な思惑から出ているとしか思われてならない。将来、自国で核兵器を製造し国の安全を守ろうとする考えを捨てきれないからではないか。そのような危険な動きをあきらめさせるために、核兵器禁止条約を日本が調印、批准するよう運動していく必要がある。無論、国の安全は核にではなく、憲法9条を基にした平和的外交によるべきである。同時に、地球温暖化阻止のために、節電の意識向上と安全で環境負荷の少ない自然エネルギー発電の拡大も必要である。
このように考えると、女川原発の再稼働の必要は全くない。
本稿は宮城保険医新聞2021年8月25日(1758)号に掲載しました。