【報告】保団連 第9回原発問題学習交流会


保団連第9回原発問題学習交流会

女川原発再稼働は住民投票で決めるべき
杉目副理事長が問題提起

 全国保険医団体連合会(保団連)は4月11日、第9回原発問題学習交流会をウェブ形式で開催し、全国から70人が参加しました。当会の杉目博厚副理事長、矢崎とも子理事、加藤純二公害環境対策部員と事務局が出席しました(以下に矢崎理事と加藤部員の報告を掲載)。
 交流会では各協会から報告があり、女川原発再稼働問題に関して杉目副理事長が報告しました。女川原発再稼働同意差し止め訴訟からみる問題点について提起し、「地元同意」の可否の判断は民意を直接反映する「住民投票」において決定されるべきだとの意見を述べました。また、福島県保険医協会の松本純理事長が現地から福島の状況を報告しました。
 そのほか野本哲夫保団連公害環境対策部長による基調報告、岩井孝氏(日本科学者会議原子力問題研究委員会委員長)による記念講演「原発の廃炉・使用済み燃料の課題について」が行われました。記念講演で岩井氏は、「東京電力福島第1原発事故機の廃炉は問題山積みであり、燃料デブリの全量取り出しは技術的に不可能である」と述べました。現状の「更地方式」から「墓地方式」(核燃料以外の容易に撤去出来ない部分を解体せずに、頑丈な構造物で覆い盛土をして保管すること)の説明と提案があり、「国が永久に管理することが必要だ」と強調しました。
 最後に、アピール「東京電力福島第一原発事故から10年―原発ゼロをめざして広範な人々と連携を」と、「トリチウム汚染水の海洋放出を行わないことを求める」との要請書を参加者で確認し、閉会となりました。

 

女川原発廃炉に一層注力すべく力を得た

理事 矢崎 とも子

 記念講演は、専門家ならではの話で多くを学ぶことができた。東京電力福島第一原発の廃炉工程が当初予定から既に十年も延期されている。にもかかわらず廃炉終了時期を延期していないという矛盾。デブリの取り出しと同時に全ての放射性物質を撤去し(撤去先は未定)、敷地再利用が可能になるまでに百年以上が必要で、建屋の地下の一部や汚染土壌を残した場合は数百年が必要ということ。事故を起こしていない原発の廃炉費用は明らかに過小評価であること。とても低レベルとは言えない制御棒も含め発生する放射性廃棄物は全て「低レベル放射性廃棄物」とされること。汚染レベルによって地下百メートルに埋めて三百年・十メートルで三百年・浅い地表に埋設し五十年管理などと決めているが、それ以降は放置するということ。国は一定期間の規制はするが管理は全くせず、管理は廃棄物処分業者任せであること。国は処分場への十万年の隔離規制を要求していることなど。得るものがとても多かったが、明確になっていないトリチウム水の健康への影響や生物濃縮については言及を避け「風評被害を広げるので保管を続けるべきだ」という考えを示したのはとても残念であった。
 十万年前はホモサピエンスがアフリカから世界各地に拡がった時代。これから十万年の隔離規制は誰がどう保障するのか。三百年前は忠臣蔵の時代。国は何をもとに一業者に三百年の管理を任せられるのか。十年たっても先が見えない福島の現状、各地からの報告。原発を作ったのは誰か、責任を取るべき主体は何処にあるのか。改めて怒りが湧いてきた。女川原発廃炉への取り組みに一層力を注ぐべく、力を得た有意義な時間であった。

 

岩井孝氏による記念講演を聞いて

公害環境対策部員 加藤 純二

 岩井氏の講演は原発の廃炉と使用済み核燃料の処理にかかる推定金額と期間のお話が主だった。特に福島原発の事故処理については、10年たった今も1号機には使用済核燃料がプールに約400体、2号機には約600体が残されており、後者の内部は1階床で1時間4400㍉シーベルトの放射能があり、人が入れない。折しも汚染水を希釈して海に流すことが決まったばかり。処理水と言っているがトリチウム以外の放射性物質が放出基準値を超えており、今後も溜まり続ける。前首相が「アンダーコントロール」発言を行い、オリンピックが招致され、聖火リレーが始まった。福井県敦賀市の夢の原子炉・もんじゅは約1兆円をかけたにもかかわらず、事故続きで廃炉が決まった。その後も1日の管理費は数千万円かかっているとされる。
 地震の多い日本では原子力発電はすべきではなかったのだ。もはや日本はダメというのが小生の正直な感想であった。日本国民の経済と心が貧しくなるのは当然である。病気で言えば、手の施しようがない状態。予防や早期発見・治療はなぜできなかったのか。
 講演のあと、矢崎先生がトリチウム汚染水の危険性について質問し、杉目先生から宮城県の女川原発再稼働への反対運動の経過報告があった。当協会にこの二人の先生がおられることがせめてもの救いと思った。

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