シリーズ「女川原発廃炉への道」
県議会は審議を尽くせ
歯科・仙台市 宇根岡 實
今年2月26日、原子力規制委員会は女川原発2号機を新規制基準に適合していると再稼働を了承した。以来、再稼働への動きが急加速している。8月には、住民説明会を原発30㎞圏内7カ所で開催した。コロナ禍ということもあり、参加者は議員などの招待者を含めわずか757人であり、1分間の質問時間で再質問も認めず、国と東北電力は陳腐な回答に終始した。筆者も参加したが、反対意見が大勢を占め、住民説明会を開催したというアリバイ作りをしただけで、住民への理解が進んだとはとても思えなかった。
事故時の避難については多くの質問が出された。県の試算によると、30㎞圏の住民が一斉に避難すると、大渋滞により5㎞圏の住民の避難は最長で3日弱かかるとされる。そのため5㎞圏の住民の避難が優先され、他の住民は屋内退避するという計画であった。屋内退避中の被ばくの問題については、屋外退避より安全と国は述べるにとどまり、住民の不安を払拭する内容とは言い難かった。
論議の舞台は県議会9月定例会へと移された。9月24日には国の担当者から説明を受ける議員全員協議会が開催された。10月1日からは各派の代表質問が始められた。河北新報によると新型コロナウイルス感染拡大を防ぐためと称し、利用できる席が178席中わずか18席に限られ、20人ほどの傍聴者が入場できなかったとのことである。10月13日には環境福祉委員会が開催され、女川原発2号機の再稼働に賛成する請願を自民党・県民会議などの賛成多数で採択した。請願の審査はわずか9分であったと報じられている。そして残念ながら、10月22日の本会議で再稼働賛成の請願が採択された。
女川原発2号機の再稼働時期は、安全対策工事が2年遅れとなるため、2年以上延期されることは明白である。県議会は県民の命と暮らしに関わる重大な事項について、なぜ正々堂々とした論議を避け、結論を急ぐのか甚だ疑問である。
本稿は宮城保険医新聞2020年11月25日(1733)号に掲載しました。